7月 26, 2023

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 シリコンカーバイド(SiC)は、特に困難なアプリケーションで注目を集めている新しいワイドバンドギャップ(WBG)材料です。しかし、新しいために(また重要な情報がオンラインで入手可能にもかかわらず)、多くの誤解があり、設計者がこの技術を最大限に活用する妨げになっています。


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図1:SiCウェハーイメージ

 

シリコンMOSFETの代替としては窒化ガリウム(GaN)が適しており、SiCは純粋にIGBTの置き換えであるという考え方もあります。しかし、SiCは優れたRDS(ON)*Qg性能指数(FoM)を持ち、逆回復電荷(Qrr)が低いため、トーテムポール型PFCや同期ブーストなどのハードスイッチングアプリケーションでは、優れた選択肢となります。

 


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図2:業界最小Rds(on)を実現するオンセミの1200V EliteSiC M3S高速スイッチングMOSFETおよびハーフブリッジモジュール

 

IGBTと比較すると、SiC MOSFETはアバランシェ耐性に優れており、短絡が発生した場合でも、適切なゲートドライバと併用すると、SiCは少なくともIGBTと同等の耐久性を実現できます。

 

SiCは10~20 kHzで動作する電気自動車(EV)のトラクション用途に広く使用されていることから、低周波技術であると考える人もいるかもしれません。しかし、ダイ面積の縮小によるゲート電荷(Qg)の低下は、SiCデバイスが100 kHzでのトーテムポール型PFC (TPPFC)および200~300 kHzでのソフトスイッチングLLCで適切に使用されることを意味します。

 

明らかに、SiCデバイスの駆動にはシリコンとは異なるアプローチが必要です。負のターンオフゲート電圧は必ず必要というわけではなく、適切なレイアウト手法を実践している一部のアプリケーションでは必要ないことがわかっています。しかし、多くの人が「バウンシング」による不用意なターンオンを確実に排除するには、負のゲートドライブを使用することが適切な設計手法であると考えています。

 

SiCゲートドライバは入手可能で、使い方も簡単です。SiCデバイスが複雑であるという認識は、おそらくSiCデバイスをSi MOSFETまたはIGBTドライバで駆動しようとするエンジニアから生じてきたものと思われます。専用SiCドライバは、負ゲート駆動、非飽和(DESAT)、過電流保護(OCP)、過熱保護(OTP)、その他の保護などの便利な機能を提供します。適切なドライバを使用すれば、SiCの駆動はシリコンMOSFETの駆動と同じくらい容易になります。

 

多くの場合、SiCは高価であると考えられており、シリコンMOSFETと同等のSiCデバイスを比較する、きわめて単純なデバイス間比較を行った場合、SiCデバイスではわずかな価格プレミアムが生じます。しかし、SiCデバイスの性能向上により、このわずかな価格プレミアムを補って余りあるほどに、設計の他の部分で大幅なコスト削減が得られます。

 

一般的なシリコンベースの30 kWパワーソリューションを検討すると、全体のコストの90 %がインダクタとコンデンサ(それぞれ60 %と30 %)に関連し、半導体デバイスは総BOMコストの10%に過ぎないことがわかります。シリコンMOSFETをSiCスイッチに置き換えることで、キャパシタンスとインダクタンスが75%削減され、大幅な小型化とコスト削減が可能になり、SiCデバイスのコストプレミアムをはるかに上回ります。

 

以下の図は、高いレベルにおいて、SiCの高耐圧化により、優れたRds(on)*Qg特性を備えた高いブレークダウン電圧を持つデバイスが実現し、シンプルなトポロジを高い周波数で動作させ、それによってコストとサイズの削減が可能になることを示しています。

 


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また、SiCはより効率良く動作するため、ヒートシンクが大幅に縮小(または廃止)され、さらなるサイズとコストの削減が実現します。その結果、SiC設計の総BOMコストは、同等のシリコンアプローチよりも有利な水準に達しています。

SiCはまだ比較的新しい技術ですが、SiCが主流になるにつれて、そのエコシステムが急速に発展しました。サプライヤは、多くのSiCデバイスと関連するゲートドライバを、リファレンスデザインアプリケーションノート、シミュレーションモデル/ツールと共に、多くのアプリケーションに適合するよう、さまざまなパッケージで提供しています。オンセミ(onsemi)は、強力なオンラインモデリングおよびシミュレーションツールを提供しています。オンラインのセルフサービスPLECSモデルジェネレータを使用すると、ユーザはカスタム回路のハイファイPLECSモデルを生成できます。生成されたモデルはElite Power Simulatorにアップロードされ、そこでオンセミのパワー製品を導入して、半導体プロセスコーナーの影響を含むシステム性能を表示することができます。この仮想環境により、システム設計者はハードウェアにコミットする前に、最適化されたソリューションに向けて、迅速に反復作業を行うことができるため、市場投入までの時間を大幅に短縮することができます。

 


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 図3:セルフサービスPLECSモデルジェネレータ

 

サプライチェーンも進化しており、オンセミは最近GT Advanced Technologies (GTAT)を買収しました。GTATは、SiCブールの大量成長、基板、エピタキシ、デバイス製造、クラス最高の統合モジュール、ディスクリートパッケージ・ソリューションなどのエンドツーエンド供給能力を持つ唯一の大規模サプライヤです(エンドツーエンドのSiC製造能力とEliteSiCファミリソリューションが創る持続可能な未来の詳細をご参照ください)。

 


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図4: オンセミのエンドツーエンドサプライチェーン

 

オンセミは、基板の生産能力を5倍に急拡大し、デバイスおよびモジュールの生産能力を拡大するために多額の投資を行い、2024年までに4倍にし、将来的にはこれをさらに2倍にする予定です。

 

多くの誤解が根強く残っていますが、適切な質問をしてこれらの誤解を解消することで、設計者はこの新しい材料の最大の可能性を理解できるようになります。

オンセミのEliteSiCの詳細についてはリンク先をご覧ください。