最新の車載および産業用アプリケーションはどちらも、信頼性が非常に重要です。車載ゾーン制御ユニットや産業用アプリケーションにおけるコンピュータ数値制御など、最終製品構造の複雑さに関係なく、信頼性が低いとほぼ間違いなくメーカの評判は悪くなるでしょう。さらに、保証修理費や場合によっては、リコールの費用もかかります。
しかし、外部からの影響や構成部品の経年劣化により、電子回路はいずれ故障します。このような状況では、適切な設計手法として、故障の影響を最小限に抑える回路保護デバイスを組み込むことが推奨されます。
この記事では、標準的な回路保護デバイスの限界と、eFuseを使用して設計を改善する方法について説明します。
おそらく最も一般的な(そして最も低コストの)回路保護の形式は、通常のヒューズです。これらは低温の融解点を持つ金属ワイヤまたは、薄い金属ストリップを利用しています。ヒューズは通常、電源に挿入され過電流が流れると、ヒューズ内で発生した熱でワイヤ/ストリップが溶解します。その結果、回路から電源が切断されます。
通常、この断線は瞬間的なものではなく、ヒューズが「とぶ」までの時間は故障電流に反比例します。この電流がヒューズの定格をわずかに超える程度であれば、しばらくの間電流が流れて電源レールに影響を与え、回路の誤動作や損傷を引き起こす可能性があります。
ヒューズは便利なものではありません。切れたら交換する(通常はユーザーが)必要があります。誤った定格を使用した場合は(不注意または故意に)、火災の危険があります。
正温度係数(PTC)サーミスタなど、他のデバイスを使用することもできます。これらのPCB実装デバイスは、温度が上昇すると抵抗値が増加し、流れる電流が制限されます。過電流が過剰でなければ(過剰な場合はPTCサーミスタが開回路状態になる)、電流が減少するにつれ温度が低下し、通常動作に復帰します。
そのためヒューズの交換は不要ですが、PTCサーミスタの温度特性は非線形のため、動作原理上は広い温度範囲での使用にはあまり適していません。
eFuse
電子ヒューズ(または「eFuse」- オンセミ(onsemi)が最初のデバイスを市場にリリースした際のネーミング)は、基本的な回路保護を提供する最新式の代替デバイスで、ヒューズよりもさらに多くの機能を備えています。通常、短絡を含む過電流、過電圧、逆電流、過度の温度上昇に対する保護が含まれています。
これらの革新的なデバイスの用途は多岐にわたりますが、一般的にはホットプラグや電源異常が頻発する場所で使用されます。また、負荷障害の可能性が大きい場合や、突入/突出電流制限が必要なシステムでも使用されます。
イネーブルピンを高精度電流制御メカニズムと組み合わせることによって、このデバイスは、最新の分散型電源アーキテクチャにおいて、負荷点制御システムの基本構成要素として機能する負荷スイッチとヒューズの組み合わせになります。
eFuseの主な利点は、その柔軟性と自己リセット機能であり、ユーザーの介入が不要になります。インテリジェントデバイスとして、過電圧/過電流保護(これが秀でている)だけでなく、システム内で機能の追加が可能です。
例えば、多くのeFuseにはパワーグッド(”PGOOD”)ピンが用意さており、システムコントローラと併せて使用することで、パワーレールを厳密にシーケンスすることができます。複数の電源レールを同時にオン/オフするために使用できる、トライステートピンを備えたeFuseもあります。
逆電流検出機能(従来のヒューズでは不可能)は、OR 接続が必要な冗長電源アプリケーションで有用です。これは多くの場合、起動時の突入電流を制限するなどの目的で、システムシャットダウン後に電荷を保持するための大容量コンデンサが必要な場合にも役立ちます。

図1: 保護強化のための幅広い機能を提供するeFuse
多くのアプリケーションにおいて、コンデンサ(または容量性負荷)は、構成部品やPCBトレースに損傷を与える可能性がある大きな突入電流の原因となる場合があります。eFuseは、自動リトライや、コンデンサを適切に充電するための突入電流制限など、設計者がこれに対処するのに役立ついくつかの機能を提供できます。
eFuseは、インテリジェントなデバイスとして、温度、電圧、電流を監視し、このデータをシステムコントローラに渡すことができます。この機能は、切迫した障害の早期警告となるような変化を検出するのに特に有用です。
車載用eFuse
どの車両にも搭載される技術が増えるにつれ、信頼性の高い動作を保証し、損傷を防止するために、適切な回路保護を行う必要性が高まります。バッテリの電流容量は、繊細な電子部品を破壊するのに十分なため、車両では回路保護が特に必要です。
eFuseは通常、サブシステム(ヘッドアップディスプレイやインフォテインメントなど)への電源ラインで使用され、障害発生時にはこれらのシステムを切り離して、シャットダウンします。
車両に部分的に外付けされるシステムでは、外部エレメントが壊れると短絡が発生し、内部回路が損傷する可能性があります。そのようなシステムの一つがテレマティクスであり、外部LNAとGPSアンテナはeFuseを介して接続され、eFuseが車両内の回路を保護しています。
車両システムがゾーンに分割されている場合は、システム内でeFuseをカスケード接続して、サブシステムの保護だけでなくシステム全体の保護も提供できます。

図2:ゾーン化された車載アプリケーションでのカスケード型eFuseの使用
例えば、ADASドメインコントローラでは、電源とメインシステムの間にメインヒューズを接続し、セカンダリヒューズを使用して、外付けした超音波パークアシストセンサユニットなどのシステム周辺機器を保護することができます。
最近の車両のワイヤハーネスは複雑なサブシステムとなっています。高価であり、車両組み立て後は交換が難しいため、保護が不可欠です。電力を必要とする多くの機器(ファン、ウィンドウモータ、エアコン、その他のアクチュエータ)がハーネスに接続されます。過電流の引き込みにつながる障害発生時にハーネスを保護するために、通常これらのシステムの前にヒューズが使用されます。
eFuseの最新技術の例
オンセミのNIV(S)3071は、4つの独立したチャネルを5.0 mm x 6.0 mmの単一パッケージに統合した60 VDC、65 VTRのeFuseで、各チャネルが連続最大2.5 A(合計10A)の電流をサポートします。各チャネルのRDSon値はわずか80 mΩで、eFuse内の損失を最小限に抑えます。
全チャネルに共通の設定可能な電流制限があり、その他の機能としては、出力電圧クランプ、障害を示すデジタルフラグ、設定可能な電流トリップ時間、固定1 msソフトスタートなどがあります。
NIV3071は、-40ºCから+150ºCのジャンクション温度(TJ)で動作し、2 kVのESD保護を備えており、12 Vと48 Vの両方で要求の厳しい車載アプリケーションに最適です。
NIV(S)4461は、産業オートメーション、テレコム、コンピュータなどのアプリケーションで、過電流、低電圧、および突入電流保護を提供するシングルeFuseです。このデバイスは、最大30 Vの電圧まで連続電流をサポートできます。
このデバイスの注目すべき特徴は、低抵抗(標準RDSon= 39 mΩ)と高速トリップ時間です。このデバイスには、プログラム可能な電流制限(1~7A)、低電圧、可変スルーレート制御も備わっています。ユーザー設定可能な機能としては、ラッチオフ、自動リトライがあります。
NIV(S)4461は、わずか3.0 mm x 3.0 mmのDFN-10パッケージに収納されています。業界標準のピン配置を備え、UL2367およびIEC62368に準拠しています。
まとめ
回路保護は現代の設計に不可欠な要素であり、回路とシステムの信頼性を確保し、故障や予期せぬ状況が発生した場合の損傷を最小限に抑えます。
従来のヒューズもある程度の保護を提供していましたが、最新のeFuseは、より高い精度、より高い柔軟性、幅広い機能セットを提供しており、達成可能な保護が大幅に向上しています。