アセットタグのバッテリ寿命: 5ヶ月では短すぎる理由

著者:  Bruno Damien  - 06-08-2021 

モノのインターネット(Internet of Things、IoT)に関わる多くの業界でみられるように、Bluetooth® Low Energy (LE)接続は資産(アセット)管理の状況を完全に変えました。現在、Bluetooth LE は、追跡可能な資産タグの50%のシェアを占めています。

RFID ベースのタグやラベルはまだ使用されていますが、資産を取り巻くイベントに関するアクティブなデータを提供する能力には限界があります。RFID は追跡システムではなく、スキャナと人手を必要とする識別技術であると考えられています。

このような理由から、ほとんどのRFID タグメーカーは、新しいタグの開発にBluetooth LE を検討しています。

組み込みMCU 上でBluetooth LE を実行することで、環境データのログ送信、コールドチェーン管理、正確なリアルタイム・ローカリゼーションなど、さまざまな付加価値サービスが可能になります。

図1. 接続技術別のアセットトラッキング予測

 

2015 年のBluetooth タグ市場は、22 社のメーカーから約26 機種が発売された黎明期にありました。その時点でアイルラボ(Aislelabs)社が、それらのデバイスそれぞれの技術ベンチマークを発表しました。その結論は、彼らの特定のテスト条件とCR2032 バッテリの下でのバッテリの寿命は、デバイスメーカーとシリコンチップセットのベンダーに依りますが、4~5ヶ月が限界であるというものでした。

図2. Bluetoothタグのバッテリ寿命の比較(月単位)(出典:アイルラボ社)

 

この寿命は、運用コストをできるだけ低く抑えることが極めて重要なインダストリー4.0 はもちろんのこと、コンシューマ向けアプリケーションにも十分ではありません。メンテナンスやサービス料、バッテリ交換やリサイクル費用を考えると、およそ5 ヵ月ごとに点検しなければならない機器を導入するのは現実的ではありません。当社のフィールド調査によると、バッテリ寿命5 年の運用を実現することは、産業用資産追跡タグにとって重要かつ必要な目標です。

以下のセクションでは、性能や配備の柔軟性に妥協することなく、5 年間のバッテリ寿命を持つBluetooth LE 対応タグの開発を可能にした主要な技術について説明します。

 

低消費電力無線

どのような無線設計においても、バッテリ寿命を延ばすためには、主なエネルギー消費源である無線機とそれに付随するマイクロコントローラの影響を最小限に抑えることが重要です。RSL10 Bluetooth 5 無線システムオンチップ(SoC) は、業界で最も低消費電力のBluetooth LE 技術を提供しており、あらゆるバッテリー駆動システムに最適な製品です。

 


図3. RSL10 Bluetooth 5 無線システム・オン・チップ

 この低消費電力の性能を具体的に示すために、RSL10 をベースにしたBluetooth ビーコンの予想バッテリ寿命を、他の主要な無線SoC と比較して計算しました。以下のグラフは、送信電力やデューティサイクルなどのアプリケーション条件を同じにしてプロットしたものです。X 軸はバッテリーの容量(CR2032 コインセル1 個に相当する200〜240mAh)、Y 軸は期待されるバッテリー寿命を示しています。この例では、同じアドバータイジング・デューティサイクル(1.6Hz)、同じプロトコル、送信電力(-6DBM)の場合、期待される電池寿命は、他の4~5ヶ月に対し、RSL10ベースのビーコンは約32ヶ月となっています。

 

図4. RSL10 を用いたビーコンのバッテリ寿命の向上(データ:アイルラボ社

 

新しいエネルギー源

よりエネルギー効率の高い無線SoC を実装することで、機器・装置メーカーはこれまで不可能だった新しい代替エネルギー源を検討できるようになりました。例えば、より小型のコインバッテリ(CR24xx ~CR2016)の使用、表面実装のマイクロバッテリの使用、さらにはバッテリフリーのアプリケーションの設計などです。これらのオプションはいずれも、アプリケーション機器の重量、サイズ、複雑さの軽減により、全体的なデザインを向上させます。

図5. アセットタグ用の新しい代替エネルギー源

 

オン・セミコンダクターは最近、ドラキュラ・テクノロジーズ(Dracula Technologies)社と協力して、完全に太陽光発電(PV)で駆動するセンサノードの概念実証を開発しました。この設計は、ドラキュラ社のLAYER® と、LEAP 賞を受賞したRSL10 ソーラセル・マルチセンサ・プラットフォームをベースにしています。この設計は、クレジットカードの約半分の大きさで、バッテリ不要のBluetooth LE ビーコンと環境センシング機能を継続的に提供できました。

 

図6. RSL10ソーラーセル・マルチセンサ・プラットフォーム

 

アルゴリズムの改善

オン・セミコンダクターのエンジニアは、ブートシーケンスを最適化し、リアルタイム・ロケーティング・システム(real-time locating systems、RTLS)用の特定のアルゴリズムを開発することで、ファームウェアのレベルで資産(アセット)管理タグの性能を向上させました。

標準的なRSL10 のBluetooth LE スタックでは、デフォルトで定義された3 つのチャネル(37、38、39)で送信が行われます。これは、ビーコンイベントがアンカーやゲートウェイ機器で受信される可能性を高めるためです。所定の送信電力に対してイベントのエネルギーバジェットが最大になるように、小さくて短いバーストの消費電力を削減することが重要です。この例では、下のグラフに示すように、11 ミリ秒(ms)のイベントごとに20μJ 以下を達成しています。

この計算に基づいて、タグが33ms ごとに1 回情報を送信するとすると、CR2016 バッテリのバッテリ寿命は約6 年に延長されます。

 

図7. 最適化されたBluetooth LE の送信および待機時のエネルギー消費量測定結果

 

アルゴリズムの最適化は、Bluetooth LE の内部だけではありません。 RSL10 向けに提供されている別のファームウェアパッケージ「RSL10 Quuppa RTLS AoA CMSIS PackQ」を使用することで、消費電力をさらに30%削減できます。このRTLS の実装は、リアルタイム・ローカリゼーションを50 ヘルツで実行・更新するため、システムの性能を損なうことなく送信電力バジェットを削減できる点で特に優れています。

 

図8. RSL10 Quuppa AoA Tag CMSIS pack を使用した単一のアドバータイジングイベント

 

これらの改善により、システムインテグレーターは、設計して市場に投入するアセットタグが1年未満でバッテリ切れにならないことを保証し、トラッカーを忘れてアセットに集中できるようになります。

Bluetooth 対応タグやその他のIoT 資産(アセット)管理技術のバッテリ寿命を延ばす方法については、当社のブルーノ・ダミアン(Bruno Damien)が開催するウェビナー「How IoT Asset Management Technologies are Transforming Manufacturing (IoT 資産管理技術が製造業をどのように変えるか)」で詳しくご紹介します。

 

開催日時:

中央ヨーロッパ時間(CET):6月9日午前10時

日本時間:6月9日午後5時

または

米国時間:6月10日午前11時(PT)/午後2時(ET)

日本時間:6月10日午前3時

 

 

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Tags:Portable and Wireless, IoT
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