7月 25, 2022

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「Hayabusa」は、日本語の「ハヤブサ」を意味し、それは多くの明確な天賦の利を持つ壮大な猛禽類です。その視力は人間を凌駕し、動物界で最も高速な視力を誇ります。人間が1秒間に25フレーム程度の静止画を認識するのに対し、ハヤブサは1秒間に130フレーム近くを認識できます。また、ハヤブサは、両目に2つの眼窩(がんかし)を持つため、優れたハイパービジョンを持っています。この優れた視力により、ハヤブサは昼夜を問わず狩りをすることができるのです。このような理由から、私たちのイメージセンサプラットフォームを、自然界に存在する「ハヤブサ」にちなんで、「Hayabusaイメージセンサプラットフォーム」と名付けました。

 

私たちは、ハヤブサという動物が持つ感受性の高さと、自分たちが開発した革新的なセンサプラットフォームとの相関関係を示したいと思いました。ハヤブサは視覚認識能力が最も高い動物であるだけでなく、地球上で最も速く、激しい競争を繰り広げる動物でもあります。このように、「Hayabusaイメージセンサプラットフォーム」は、画素数(メガピクセル)の異なる複数のデバイスでラインアップされ、費用対効果の高い製品として、あらゆる環境で最適な性能を提供します。

この革新的なイメージセンサプラットフォームについて、オートモーティブセンシング事業部プロダクトマーケティング担当シニアディレクターのラディカ・アローラ(Radhika Arora)とのQ&A形式で、このプラットフォームの機能と設計上のチャレンジについてご紹介します。

 

Q:  「Hayabusaイメージセンサプラットフォーム」とは何ですか?

A: 「Hayabusaイメージセンサプラットフォーム」は、130万画素から310万画素までのAR0147ATAR0233AT、AR0323ATの3つのセンサと、AS0147ATAS0148ATAS0149ATの1メガピクセルSOC(システムオンチップ)3製品で構成されているファミリです。このプラットフォームにより、様々なニーズをお持ちのお客様に、スケーラブルなイメージセンサを提供することができます。同じプラットフォームで製品を提供することの利点は、お客様がこれらのプラットフォーム間でデータ収集を再利用できることです。画素性能は同じなので、ドライバの開発、チューニング、学習用の登録など、すべて製品で共有することができます。

 

Q: 「Hayabusaイメージセンサプラットフォーム」は車載用なのでしょうか。それとも他のアプリケーションでの使用例もあるのでしょうか?

A: 「Hayabusa」技術の起源は、当社のハイエンド・シネマグラビティセンサのポートフォリオにあります。オンセミは過去20年間、ハリウッド映画やアカデミー賞で使用される高品質デジタルカメラでARRIと協業してきました。映画用だけでなく、車載用や産業用カメラなど、さまざまな用途に「Hayabusa」の技術を応用することができました。さらに、「Hayabusa」プラットフォームをロボット用のビジョンセンサとして利用する傾向も見られます。照明条件が大きく異なる工場の現場では、ロボットによる自動化が進んでいます。このハイダイナミックレンジ(HDR)機能をロボットに追加することは、有益であることが証明されています。このように、「Hayabusa」プラットフォームは、自動車以外の分野でも幅広く活用されています。

 

Q: 「Hayabusa」プラットフォームは、どのようなシステムで利用されるのでしょうか?

A: 「Hayabusa」プラットフォームは、複数の用途があります。サラウンドビューカメラ、リアビューカメラ、カメラモニターシステム、デジタルビデオレコーダー(DVR)などがあります。また、先進運転支援システム(Advanced Driver Assistance System、ADAS)や自律走行/自動運転(Autonomous Driving)の分野でも、このプラットフォームの採用が進んでいます。ハイエンドからローエンドまで、さまざまな用途で利用されており、プラットフォームの柔軟性を証明しています。

 

Q: 開発段階では、どのような課題があったのでしょうか?

A: このプラットフォームの開発で直面した課題を述べる前に、一歩下がって、お客様が直面した課題を考える必要があると思います。オンセミは、全体で40%以上、ADASでは70%以上の市場シェアを持つ車載イメージセンサのリーダーと自負していますが、当社が直面した重要な課題は3つありました。

その課題の1つ目は、「ダイナミックレンジ」でした。私たちが撮像する風景は、多くの場合120~240dBを超えています。ダイナミックレンジとは、ある量が想定しうる最大値と最小値の比率のことです。私たち人間の運転者は、トンネルを抜けるときや陸橋を越えるときなど、かなりの量の光が顔に当たり、突然目が見えなくなる場面に直面したことがあります。このような突然の眩しさは、事故や死亡の原因になりかねません。私たちは、このセンサを開発し、このような照明の動的な変化を克服することに意欲を燃やしました。課題は、高ダイナミックレンジの条件を明確に識別し、車載用としてシーン内のオブジェクトを識別できる製品を作ることでした。このように、変化する状況下でシーンを正確に識別できることで、運転者の適切な判断を支援するプラットフォームとなるのです。

2つ目の課題は、LEDフリッカ低減(LED flicker mitigation、LFM)による照明のちらつきの克服です。交通信号機を見ると、常に発光しているように見えます。LEDライトは、人間の目では記録できない速度で脈動していますが、イメージセンサを使うと、このパルスを認識してカタログ化できます。そのイメージセンサが、オフサイクル中に信号機を捉えた時、イメージセンサは交通信号を間違って認識してしまう可能性があります。「Hayabusa」のプラットフォームは、LEDの標識や信号を正確に捉えることができます。ダイナミックレンジの確保とLEDのちらつき軽減の両方を実現できるのが、「Hayabusa」プラットフォームの特長です。


3つ目の課題は、低照度下での物体検出です。例えば、夜間走行中の運転者が、ライトを点灯したまま接近してくる対向車と対峙し、同時に歩行者が道路を横断していたとします。このとき、対向車のライトが明るいと、歩行者が見えにくくなります。人間の運転者であれば、このような状況で歩行者を完全に見落としてしまうことが考えられます。そこで、明るい被写体に対してイメージセンサを飽和させることなく長時間露光することで、低照度性能を高め、このような被写体(この例では歩行者)の撮影を可能にします。おわかりのとおり、これは安全性を高めるための重要な機能であり、重要なセールスポイントです。

 

Q: 先ほど、「Hayabusa」プラットフォームは光の影響を受ける可能性があり、その環境の変化に対して、チームが克服すべき課題があったという説明がありました。同じように、天候や温度といった要素が、このプラットフォームの性能に悪影響を与えることはないのでしょうか。

A: これはイメージセンサ全般に言えることです。温度が上がると暗信号電流という異常が発生し、暗信号不均一性は低照度下でのシステムの性能に影響をおよぼします。この暗電流は、温度が8度上昇するごとに2倍に増加します。そのため、センサはこの暗信号をより多くの「ノイズ」として認識するため、暗電流はできるだけ少ない数値から始める必要があります。この「ノイズ」は、イメージセンサが認識するものに関して、誤検出や誤動作につながる可能性があります。「Hayabusa」プラットフォームは、潜在的なノイズに対する許容値を低くし、その信頼性と精度を高め、全体の電流を減らし、画素チャートの観点から低照度認識の効率を高めています。

Q: イメージセンサが故障して、乗員や車両に危険をもたらす可能性を防ぐために、どのような安全対策を講じているのでしょうか?

A: 「Hayabusa」プラットフォームはASIL-Bをサポートしており、製品は自動車の安全規格であるISO26262に準拠しています。このセンサを使用して、システムの評価や反応に重大な影響を与える可能性のある故障を検出できます。リアルタイムな安全機構を搭載しており、認識したフレームごとにシステムの反応を評価することで、お客様にとってより安全な設計と制御性を実現できます。

 

Q:  「Hayabusa」プラットフォームが「一押し」の製品である理由は何ですか?

A:  「Hayabusa」は、クラス最高のハイダイナミックレンジを持つだけでなく、低照度性能にも優れています。ダイナミックレンジとフリッカ低減の両方を同時に実現した製品で、他の製品は通常どちらか一方だけを搭載しているため、これは非常に重要なことです。「Hayabusa」プラットフォームは、ACE-Q100 Grade2という車載グレードの信頼性と、先に述べた安全機構を備えています。信頼性と性能の面で、この解像度で他の製品より優れています。

オンセミonsemi)は、今日のエコシステムにおいて、非常に戦略的なポジションにあります。「Hayabusa」プラットフォームは、レンズ、モジュール、モジュールからのインタフェースで構成される非常に複雑なシステムで、シリアライザーについては他の企業との協業が必要です。また、イメージセンサを市場にある他のプロセスでチューニングし、適切な画像処理と最終的な画質を確保することも、私たちの強みです。これらの項目はすべて、お客様がイメージセンサを設計に組み込むために必要なエコシステムの一部であり、十分に成熟している必要があります。オンセミは、これらの重要な項目で業界をリードしており、お客様がイメージセンサをシステムに組み込む時間を短縮するのに役立っています。

オンセミイメージセンサADASソリューションの詳細については、オンセミのウェブサイトをご覧ください。

 

参考資料