太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー源の大きな問題点は、これらが完全に制御可能ではないということです。このため、再生可能エネルギー源から生成された余剰エネルギーが豊富にある場合は、余剰エネルギーをバッテリに貯蔵するのが理にかなっています。本ブログでは、住宅用と商用のバッテリエネルギー貯蔵システム(BESS)の違いと、それぞれに使用される最も一般的な回路トポロジについて説明します。また、BESSの性能を一段高いレベルに引き上げるオンセミのシリコンカーバイド(SiC)ソリューションも紹介しています。

図1: BESS実装の概要
BESSを備える利点
蓄電バッテリを備えたオングリッドまたはオフグリッドの太陽光発電インバータシステムを使用すると、住宅用および商用ユーザは以下のような多くの利点が得られます。
- 料金:エネルギーを貯蔵することで、電力会社に代わる選択肢ができ電気料金を削減できます。
- 自給自足:エネルギーを貯蔵することで、送電網への依存度を減らす(またはなくす)ことができます。
- バックアップ:貯蔵された電気は、商用電源に障害が発生した場合に、代替電源となります。
BESSの主なビルディングブロック
BESSには一般に、以下の4つの主なビルディングブロックが含まれています。
- 充電式バッテリモジュール:これは50 Vから1000 V以上の範囲の容量を持つラックマウント型バッテリセルで構成されます。
- バッテリマネジメントシステム(BMS):BMSは充電式バッテリを保護・管理し、安全な動作を確保します。
- 電力変換システム(PCS):PCSはバッテリパックをグリッドや負荷に接続します。
エネルギーマネジメントシステム(EMS):このソフトウェアは、BESSの監視、制御、最適化を行います。
住宅用BESS
BESSで使用する電力変換システムは、エネルギーの結合方法(ACかDC)と電力レベル(住宅用か商用)によって分類されます。DC結合システム、つまりハイブリッドインバータは、1つの電力変換ステップしか必要ないのに対して、AC結合エネルギー貯蔵は既存のDC結合システムをアップグレードしたものです。

図2: 住宅用のAC結合ESS(左)とDC結合ESS(右)
双方向DC-DCコンバータは、バッテリパックとDCリンクを接続します。単相システムのバス電圧は、通常 600 V未満であり、充放電電力は10 kWを超えません。昇降圧コンバータは、必要な部品点数が少なく制御が容易なため、最もよく使用されている双方向DC-DCトポロジです。このような双方向システムでは、オンセミのFGH4L75T65MQDC50 650 V FS4 IGBT(SiCダイオード内蔵)のような並列ダイオードを内蔵した 650 V IGBTまたはMOSFETを2個使用すれば完璧です。

図3: 双方向DC-DC用の昇降圧
絶縁によりBESSユーザの安全が確保され、デュアルアクティブブリッジコンバータ(DAB)またはCLCCトポロジによりBESS向け絶縁型双方向DC-DCコンバータソリューションが実現します。これらには、オンセミのNTP5D0N15MC 150V NチャンネルシールドゲートPowerTrench MOSFETが適しています。
三相は、電力需要が大きい商業施設や事業所、家庭での標準的な電源です。三相アプリケーションのパワースイッチは、最大15 kWの供給に必要な動作電圧と動作電流、さらには住宅設備で使用される高いDCリンク電圧(最大1000 V)にも耐える必要があります。これは1200 Vのデバイスを、3レベル対称昇降圧トポロジに使用することで実現できるはずです。
商用BESS
商用エネルギー貯蔵システムの入力および出力電力の範囲は、通常100 kWから2 MWまでです。このような大規模設備は、数十kWから100 kWを超える範囲のいくつかの三相サブシステムで構成されている場合があります。標準的な商用太陽光発電インバータのDCバス電圧は、通常は1100 Vですが、実用規模のシステムでは最大1500 Vになることもあります。
AC結合システムは、既存の設計に簡単に追加できるため、商用BESSではよく使用されます。また、集中型エネルギー貯蔵ユニットは、設置やメンテナンスがはるかに容易です。対照的に、DC結合システムは、バッテリバンクが分散しているため、必要なシステムが大型になりメンテナンスコストも高くなります。