6月 19, 2018

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電流検出アンプ(current sense amplifier, CSA)の入力または出力におけるフィルタリングは、複数の異なる理由で必要となる場合があります。ここでは、1 mΩ以下のごく小さなシャント抵抗を使用する場合に、電流検出アンプNCS21xRおよびNCS199AxRにフィルタ回路を導入する方法を中心に説明します。1 mΩ以下のシャント抵抗には、電流検出ラインでスパイクトランジェント事象を発生させるシャントインダクタンスがあり、それがCSAのフロントエンドに過負荷を及ぼすことがあります。この特定のスパイクトランジェント事象のフィルタリングに関し、考慮すべき点を説明します。

一部のアプリケーションでは、測定する電流に本質的にノイズが発生します。ノイズを含む信号の場合、通常は電流検出アンプの出力後のフィルタリングの方がシンプルであり、アンプの出力がインピーダンスの高い回路につながっている場合は特にそうです。フィルタのコンポーネントを選ぶ際、アンプの出力ノードの自由度は極めて大きく、実装が非常に容易です。しかし、その後段にバッファリングが必要な場合があります。

シャント抵抗の値が低下するにつれ、シャントインダクタンスは、周波数の応答に大きな影響を及ぼすことがあります。1 mΩ以下の値では、シャントインダクタンスはゼロにし、その結果、数百ヘルツの低いコーナー周波数をしばしば発生します。このインダクタンスは、電流検出ラインにおける高周波スパイクトランジェント事象の振幅を増加させ、それがシャント電流検出ICの前段に過負荷を及ぼすことがあります。この問題は、アンプの入力におけるフィルタリングで解決しなければなりません。すべての電流検出ICは、製造元の主張に関わらず、この問題の影響を受けやすい点に注意してください。スパイク周波数がデバイスの定格帯域幅を超えている場合でも、この問題を解決するためにデバイスの入力にフィルタリングが必要です。

DC-DCコンバータや電源アプリケーションなどの他のアプリケーションでも、電流検出アンプの入力にフィルタリングが必要な場合があります。図1 に入力フィルタリングの推奨回路図を示します。


1 入力フィルタリングによる、1 mΩ未満のシャント抵抗におけるシャントインダクタンスの補償とあらゆるアプリケーションにおける高周波数ノイズの補償

フィルタ抵抗の抵抗値の増加とそれらの抵抗間の抵抗値のミスマッチが、ゲイン、CMRR、およびVOSにマイナスの影響を及ぼしうるという事実により、入力フィルタリングは複雑になります。VOSに対する影響は、部分的には入力バイアス電流が原因です。結果として、入力レジスタの値は10 Ω以下に制限すべきだということです。最低でも、シャント抵抗およびインダクタンスの時定数に正確にマッチするコンデンサを選んでください。別の方法として、このポイントを下回るポールのコンデンサを選択することもできるでしょう。

入力フィルタの時定数をシャントおよびインダクタンスの時定数以上にする方法:


これにより、各RFILTで10 Ωレジスタを使用して、CFILTの値を容易に決定できます。


主な目的が高周波ノイズのフィルタリングである場合、コンデンサは望ましいフィルタリングに達する値まで増加させてください。

たとえば、100 kHz のフィルタリング周波数除去には、80 nFのコンデンサが必要です。コンデンサは、定格電圧が低くても高周波数特性は良好でなければなりません。必要なコンデンサの値は、下記の公式で計算できます。


トランジェント抑制

トランジェント・コモンモード電圧が30Vを超えるアプリケーションでは、トランジェント抑制回路が必要です。トランジェント抑制回路の設計方法の詳細に関しては、NCS21xRデータシートの基本接続アプリケーションメモを参照してください。

フィルタリングは必ずしも必要ではなく、たとえば電流における動的変動が小さいバッテリ駆動のDC 回路を使用できます。供給電流または電圧において高速変動が生じる大規模で複雑なシステム(例:サーバー、コンピューティング)では、電流の制御、測定、および分析のためのノイズのない信号を提供するために、一般的にフィルタリングが必要です。

オン・セミコンダクターの電流検出アンプの詳細は当社のウェブサイトの以下のページをご覧ください。