前回のブログ(Part 1)では、産業用センサーがスマートマニュファクチャリングにおけるフィジカルAIシステムの中枢制御として、どのように機能するかを説明しました。産業用センサーは、機械学習モデルが自律的な意思決定を行うのに必要なデータを提供します。センサーで可能になるリアルタイムフィードバックループにより、機械は状況の変化に対応してパフォーマンスを最適化することができます。今回のブログでは、産業用センサーの進化とスマートマニュファクチャリングにおけるフィジカルAIの動作について考察します。
インダストリー4.0およびIoTのトレンドによって、品質、工場アップグレード、生産予測に関してインテリジェントな意思決定を行うためのデータ提供に加えて、生産性、安全性、予知保全を向上させるためのインテリジェントセンサーが爆発的に普及しました。単に測定を行って、コントローラーに意思決定のためのデータを送信するだけのセンサーとは異なり、新しいセンサーは遅延や工場スループットを向上させる上で重要な役割を果たしています。さらに、インダストリー5.0すなわちスマートマニュファクチャリングは、人間中心のアプローチへと大きく転換しており、それによって人とロボットの協働を実現する安全センサーや、工場が社会に及ぼす気候への悪影響を低減する環境センサーの普及を後押ししています。
センサーの技術革新
システム設計者は、センサーを構築するのに、オペアンプ(Op-Amp)、電圧リファレンス、A/Dコンバーター(ADC)、パワーマネジメント、セントラルプロセッサーユニット(CPU)、インタフェース、およびセンスエレメントと連携してアナログ信号をデジタル化して処理し、I/Oモジュールに接続してプログラマブルロジックコントローラー(PLC)にデータを送信するシステム機能のそれぞれに、既製のICを使用していました。プロセスオートメーションのセンサーの場合、アプリケーションによってはADCとCPU間およびCPUとインタフェース間にオプションのガルバニック絶縁が必要になることがあります。
ICベンダーは、オペアンプ、電圧リファレンス、ADC、パワーマネジメントなどの機能を備えた特定用途向けアナログおよびミックスドシグナル回路をシングルチップに統合しました。これはセンサーアナログフロントエンド(AFE)(図1参照)と呼ばれ、低遅延、高精度、小型化、使いやすさを実現しています。
新しいセンシング技術は、生産スループットや生産能力に影響します、そしてコントローラーを必要とせず単一センサーによる独立した意思決定や、複数のセンサーによる連携した意思決定を行う機能が出現したことにより、センサーにおけるより高精度なAFE/ADCやマイクロコントローラーのニーズが高まってきました。電源とデータを同じ配線またはワイヤレスで供給したいというニーズから、OEM各社は新しいインタフェース規格の採用を迫られています。最後に、AI/MLは市場にとって大きな可能性を秘めていますが、顧客はその活用方法が見いだせず、十分に生かし切れていないのが現状です。
高密度・高速デジタルロジックと高電力・高精度アナログを同一IC上に混載した90 nm未満の新しい先進BCD(バイポーラCMOS DMOS)プロセスは、センサーAFEの枠を超え、プロセッサーさえもシングルチップに集積する完全統合型センサーコントローラーの実現の道を開いています。Treoプラットフォームは、そのようなプロセスの好例です。半導体のプロセスジオメトリを微細化するとゲート電圧が低くなります。他のベンダーは、180 nm以下のプロセスでアナログブロックに1.8 Vの低ゲート駆動電圧を使用するため、チップ上に大規模なノイズ除去回路が必要となりICのダイサイズが肥大化するのに対し、オンセミはアナログ回路に3.3 V、デジタルロジックゲートに1.2 Vのゲート駆動電圧を採用することで、ノイズや長期信頼性の問題を回避しつつ、ミックスドシグナルICで最高の密度、性能、精度を達成しています。
産業用センサーの今後のトレンド
インダストリー4.0がセンサーにデジタル化、クラウド分析、インテリジェンスを追加したように、インダストリー5.0は、工場の生産現場において人間と機械が協調して作業することを目指すものであり、AI搭載センサーによって現実のものとなりつつあります。外部にハイエンドの25 TOPS(Tera Operations Per Second毎秒1兆回演算)エッジAIプロセッサーが必要なマシンビジョンセンサーとは異なり、その他のタイプのセンサーはすべて、センサーコントローラーチップ内に、AIとデジタル信号処理(DSP)アクセラレーターエンジンを搭載する必要があります。
以下にセンサーコントローラーの例をいくつか示します。
- NCS32100誘導型位置センサー:NCS32100は、プリント基板のセンサーエレメントと組み合わせることで、高分解能・高精度の角度センシングを実現する多機能のコントローラーおよびセンサーインタフェースを提供します。NCS32100は設定柔軟性が高く、さまざまな誘導型センサーパターンに接続できるほか、多様なデジタル出力フォーマットに対応しています。誘導型センシング技術は、優れた温度耐性、簡素な機構、汚染への耐性など、従来の位置センサーソリューションにはない独自の利点を備えています。この誘導型位置センサーコントローラーは、オンボードDSPエンジンに搭載された適応学習アルゴリズムを使用することで、現在使用されている光学式エンコーダーの性能に迫る、回転式モーターエンコーダー向けの高分解能・高精度の角度センシングソリューションを提供します。プログラマブルインデックス、温度、バッテリー測定機能を備え、外部RS-485ドライバーへの接続をサポートします。NCS32100は、産業オートメーション、ロボティクス、モーター制御、サーボアプリケーションに最適です。
- NCV75215超音波センサー:オンセミの超音波センサーコントローラーは、近接、存在、流量、濃度、漏れ、圧力、温度、液面などの検出に使用できます。これらは、非接触検出、高分解能、そして過酷な環境での測定能力を備えています。これは内蔵のアクセラレーターエンジンによって可能になります。このコントローラーは、センサー洗浄(超音波レンズクリーニング)や音響AIセンシングでも卓越した性能を発揮します。産業オートメーション、環境ナビゲーション、プロセス制御、医療、非破壊検査などのアプリケーションに最適です。
産業用センサーは、さまざまな産業分野において、持続可能性、安全性、品質をサポートしながら生産性と効率を向上させる原動力として、製造オートメーション革命を牽引しています。オンセミのTreoプラットフォームなどの新しいミックスドシグナル半導体プロセスでは、高速デジタル処理機能と高性能アナログ機能をシングルチップに集積することができます。誘導型、超音波、画像、圧力、生化学などの技術を用いたオンセミの革新的なセンサー製品は、センサーAFEからセンサーコントローラー、AI対応センサーコントローラーまで多岐にわたり、最新の産業アプリケーションの要求に応え、高精度で信頼できる計測を実行し、動作条件の変化にも(AI/MLによって)柔軟に適応します。
オンセミの役割は、センサーを利用した技術革新を継続的に提供し、AI技術を積極的に活用して、スマートマニュファクチャリングの世界で先頭を走り続けることです。
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