はじめに
住宅や企業においてセキュリティの重要性が高まる中、最新の入退出管理の基礎としてスマートロックが台頭しています。スマートロックは、従来のキーレスエントリーの枠を超え、ワイヤレス接続、モバイルアプリ制御、生体認証を統合することにより、シームレスで安全なユーザー体験を提供します。現在の多くのシステムが視覚的な確認のために独立したドアベルカメラを使用していますが、新世代のビデオスマートロックは、カメラとロックをひとつのインテリジェントなデバイスに一体化することで、このカテゴリーの定義を刷新します。
これらの統合ソリューションは、単なる利便性を超えたものを提供します。遠隔監視、リアルタイムのアクセスログ、改ざんアラートを実現し、ユーザーは世界中のどこからでも資産のセキュリティを管理できるようになります。アクセシビリティの向上や、エッジベースの画像処理によるプライバシー保護など、ビデオスマートロックは機能性と安心感の両方で飛躍的な進歩を遂げています。
ビデオスマートロック向けイメージセンサー選定の重要ポイント
ビデオスマートロックは、後続の動作の精度が安全性や財産の損失に影響するため、高い画質が求められます。これらの製品と提供する機能には、随所に人工知能(AI)や機械学習(ML)の技術が活用されています。画質が悪いと、処理エンジンに過度な負荷がかかり、消費電力の増大や動作遅延が発生する可能性があります。
キャプチャーした画像に十分なディテールが含まれ、マシンが人物の特徴を識別して適切な処理を実行できるように、解像度を最適化することも重要です。解像度が低いとディテールが不足し、人物/物体の認識に混乱が生じるおそれがあります。
スマートロックは通常、バッテリーで作動します。これはロック部分に電源を引き込むことが非現実的であり、ほとんどの場合は不可能なためです。そのため、バッテリーの充電サイクルを最大限に延長し、ダウンタイムなしで信頼性の高い動作を実現するには、低消費電力デバイス/システムが非常に望ましいとされています。
スマートロックは物理的な設置スペースが厳密に定められています。また、基本的にロック機構とドアベルカメラなどの機能を備え、コンパクトである必要があります。多数のセンサー、処理エンジン、接続機能、バッテリーパックを搭載したスマートロックは、今や非常に高密度な電子システムとなっています。これらのすべてが、機能性や信頼性だけでなく、フォームファクターにおいても高度に最適化された設計でなければなりません。
Hyperlux LPイメージセンサー
Hyperlux™ LPイメージセンサーファミリーは、超低消費電力を実現するようにアーキテクチャーの構築と設計が行われています。AR0544およびAR0830製品ラインには、Mono、RGB、RGB-IRの3種類のカラーフィルターアレイ(CFA)を備えています。シリコンおよびピクセルアーキテクチャーは、昼夜を問わず優れた画質を実現するように最適化されており、ハイパワーIR LEDの必要性を低減します。設定可能な関心領域(ROI)、トリガーモード、および本質的に超低消費電力を特徴とするウェイクオンモーション(WoM)のような機能は、1回の充電/交換で最長期間の動作が可能であり、バッテリー電力の節約に役立ちます。そのため、スマートロックシステムが消費する電力が最小限に抑えられ、BoMコストも大幅に削減されます。
RGB-IRは、深度検出に重要な1 MPまたは2 MPのIR画像を容易に実現する手段を提供します。これはIRピクセルを統合するスマートロックにとって理想的な選択肢です。イメージセンサーにIRピクセルを追加することで、このような2D写真によるなりすましの可能性を排除できます。structured lightを使用すると、奥行き方向の輪郭の変化を認識でき、これにより3Dマップが構築され、物体の生体検知にも役立ちます。
このようなイメージセンサーには、通常動作中にIRデータが利用できるという別の利点もあります。このIRデータを利用して、スマートロックが屋外環境に面している場合に必然的に発生するIRブリードを除去できます。これにより、高忠実度の画像とシーンの真の表現を提供します。
スマートロックのリファレンスデザイン
次世代スマートロックを実現するために、オンセミはSoC/FPGAのOEMと協業してきました。AMDおよびMakarenaLabsとの提携により、オンセミのAR0830イメージセンサーを使用したハイブリッド2D/3Dスマートロックのリファレンスデザインが利用可能です。RGB-IRイメージセンサーは2Dデータと3Dデータの両方をキャプチャーでき、これらのデータが処理/MLエンジンに送られると顔検出や顔認識が可能になります。
2DデータはAIモデルに送られ、人間の顔が存在するかどうかが分析されます。その上で、データベースと照合してその人物が認定ユーザーであるか確認できます。3D画像は、カメラの前に本物の人間が立っているかどうかを判断し、2D画像によるなりすましを防止するための鍵となります。
AR0830からのIR 3DデータとVCSELプロジェクターを用いて、3D顔復元に役立つ、本物の人間の顔のポイントクラウド(点群)が構築されます。2Dと3Dの両方の情報が検証された場合にのみ、ドアのロックが解除されます。
リファレンスデザインは、量産のためにリソースを投入する前に、開発目的でスマートロックを迅速に実装する手段を提供します。オンセミのイメージセンサーは、これらのスマートロックの設計に必要なハードウェアとソフトウェアがすぐに利用可能となっています。
まとめ
スマートロックは、住宅および企業向けのスマートエコシステムの重要なコンポーネントに進化しており、セキュリティ、テクノロジー、ユーザー体験をひとつのインテリジェントなソリューションに融合させています。生体認証がより正確でアクセスしやすくなるにつれて、スマートロックは次世代セキュリティインフラとして採用が拡大しています。イメージセンサーは、AIを駆使した顔認識/行動検知および認識に必要なデータをキャプチャーする上で重要な役割を果たします。
ロックプロバイダーは、イメージセンサー、SoC/FPGA、およびソリューションにインテリジェンスを付与するAI/MLモデルが提供する機能を活用することで、アプリケーションレベルで差別化された価値に注力できるようになりました。すべてのハードウェアおよびソフトウェア要件を含む、このスマートロックのリファレンスデザインの詳細については、こちらでご確認ください。システムの評価にお役立ていただくために、AR0830ハードウェア開発キット一式とDevSuiteソフトウェア開発プラットフォームを用意しています。入手方法については、こちらからお問い合わせください。
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